大麻草栽培の過去、現在、世界の状況
戦前、大麻草は米に次ぐ日本の基幹農作物でした。それは、大麻草が衣食住のすべてを支えられる素晴らしい植物であると同時に、国産の大麻草は、痲薬成分であるTHCの含有量が極めて少なく、薬物には転用できないものだったからです。しかしながら、敗戦後の占領政策の中で、マリファナと同一視され、それに抗して大麻農家を守るために大麻取締法が作られたものの、痲薬成分を特定出来ていない時期だったために、マリファナになり得る大麻草も、なり得ない大麻草も同様に規制する法律となってしまい、結果として、国産の大麻草に対する誤解が世間に広まってしまいました。
このような誤解に、化学繊維の普及が拍車をかけ、昭和29年には約37,000人いた大麻草栽培者は今や1/1000以下の30名程度になり、その大半が70代以上と高齢化も進んで、後継者もほとんどおらず、まさに風前の灯火の状況です。一方、世界に目を向けると、大麻繊維は建材や高級車のボディ・内装に幅広く活用され、CBDという有効成分については、てんかんをはじめとした難病の治療や健康食品としての活用がはじまっており、その勢いは「グリーン・ラッシュ」と呼ばれるほどです。また、SDGsや脱炭素の観点からも大麻草は注目されはじめています。
皇學館大学 特別教授
理事長 新田均
大麻草の未来と、HIDOの志
このような内外の状況をうけて、厚生労働省は、令和3年に「大麻等の薬物対策のあり方検討会」を設け、6月に「とりまとめ」を公表しました。そこでは以下のように述べられています。「大麻草が含有する成分(THC)に着目した規制に見直す必要がある。」「成分に着目した規制に見直す場合には、含有されるTHCの濃度に関する規制基準を設けることの要否も含め、引き続き検討する必要がある。」「大麻から製造された医薬品は、・・・日本においても現行の麻薬および向精神薬取締法に規定される免許制度等の流通管理の仕組みの導入を前提として、その製造や施用を可能とすべきである。」(5頁)
さらに、厚生労働省は、厚生科学審議会医薬品医療機器制度部会内に専門家による「大麻規制検討小委員会」を設け、その主な論点として「1.医療ニーズへの対応 2.薬物乱用への対応 3.大麻の適切な利用の促進 4.適切な栽培及び管理の徹底」をあげました。
そして、
「1」については「大麻から製造された医薬品について、G7諸国における医薬品の承認状況、麻薬単一条約との整合性を図りつつ、その製造、施用等を可能とすることで、医療ニーズに適切に対応していく必要があるのではないか。」
「2」については「医療ニーズに応える一方、大麻使用罪を創設するなど、不適切な大麻利用・乱用に対し、他の麻薬等と同様に対応していく必要があるのではないか。」
「3」については「・成分規制の導入等により、神事を始め、伝統の利用に加え、規制対象ではないCBDを利用した製品等、新たな産業利用を進め、健全な市場形成を図っていく基盤を構築していく必要があるのではないか。・その際、こうした製品群について、THC含有量に係る濃度基準の設定を検討していく必要があるのではないか。」
「4」については「・現在の栽培を巡る厳しい環境、国内で栽培される大麻草のTHC含有量の実態を踏まえ、上記1~3を念頭に、適切な栽培・流通管理方法を見直していく必要があるのではないか。・特に、現行法において、低THC含有量の品種と高THC含有量の品種に関する規制が同一となっている点を見直す必要はないか」等の問題提起がなされています。
つまり、近々、大麻取締法は改正されて成分規制が導入され、基準値以下の大麻草や製品の積極的な利活用がはじまろうとしているわけです。このような状況にいたるまでには、栽培者、研究者、医師、関係企業、関係諸団体の方々の血の滲むような地道不屈の努力がありました。私も「伊勢麻振興協会」「日本大麻生産者連絡協議会」「北海道ヘンプ協会」の一員として、関係者の方々と一緒に努力させていただいてきました。
そうした立場から今後の大麻草関連産業を展望しますと、まずは大麻草栽培の歴史や意義についての正確な情報を伝えて、関係される方々の倫理意識を高め、様々な可能性を追求する際に安心して関われる出会いの場を提供することで新たな産業の創出を促進する組織が必要となってきました。そして、その前提として、安全で合理的で効率のよい栽培・生産・検査・認証の仕組みを提案し、構築できる組織の必要性も見えて参りました。それがこの度、志を同じくする方々と「一般社団法人 麻産業創造開発機構」(Japan Hemp Industrial Development Organization、略称HIDO)を立ち上げた理由です。賛同される皆様の入会を心からお待ち申し上げます。
事業概要
農業、伝統、一般、医療の各産業において、大麻草が安全で合理的に活用されることを目的として、HIDOは以下の取り組みを行います。
1.大麻草の栽培や製品流通に関連する仕組みの構築や法整備等に関する事業
*低THCを維持できる大麻草の栽培管理のシステムの考案と提言
*法定基準に準拠した大麻草由来製品の流通管理システムの考案と提言
*大麻草研究の進展と、規制・管理・認証の基準や方法とに整合性をもたせるための提言
2.麻産草についての正確な知識の普及と倫理意識の醸成に関する事業
*セミナーの開催
*ホームページでの啓発
*「HIDO検定」創設の検討
*大麻草に関連する有意義な情報の収集と発信
3. 大麻草関連産業や団体の連携促進に関連する事業
*低THC大麻草の幅広い活用のための諸機関、諸企業間の連携の促進
*CBD及びTHC検査の斡旋
*研究者や研究機関の間の情報共有や連携の促進
*安全で合理的な認証基準の提案、構築・実施の支援
*信頼できる大麻草関係諸団体の連携の促進
*その他、大麻草関連の調査・研究・検査・認証等に関する事業
4. 大麻草由来(CBD含む)の製品の開発や販売等の支援に関する事業
*大麻草及び麻科植物由来の機能性原料の法に準拠した研究及び処方開発の支援
*機能性原料の商社、サプリメントや化粧品のOEM製造者や小売り業者等の会員間での健全な取引の促進
*院内処方を行う医師・病院等と企業・研究機関などとの連携の支援
*研究開発に要する資金に関連する補助金の情報等の提供
【機構概要】
一般社団法人 麻産業創造開発機構 事務局
メールアドレス:info@hidojapan.org
電話番号 070-8418-8297
【役員構成】
- 理事長:皇學館大学 特別教授 新田 均
- 理事:星子クリニック院長 星子 尚美
- 理事:特定非営利活動法人 メディアージ 理事長 菟田 中子
- 理事 兼 事務局長:日進技研 代表 濱田 浩幸
- 麻産業コーディネーター:産学官連携「天津菅麻プロジェクト」産業用プラットフォーム HEMP HUB 代表 嘉悦 彩
- 顧問:一般財団法人 世界健康長寿学会 会長 医学博士 今井 敬喜
- 顧問:一般社団法人 北海道ヘンプ協会 代表理事 菊池 治己
- 監事:元環境大臣 弁護士 原田 義昭
- アドバイザリーボード:森下仁丹株式会社 研究開発部 部長 川上 宏智
- アドバイザリーボード:一般社団法人 日本カンナビジオール普及機構 理事長 日比野 佐和子
- アドバイザリーボード:株式会社 Speee / SPEC事業部 パートナー 遠藤 司
- アドバイザリーボード:皇學館大学 現代日本社会学部 現代日本社会学科 教授 千田 良仁
- アドバイザリーボード:株式会社リムズ ヘンプクリート事業部 部長 田島 弘章
- アドバイザリーボード:日本大学 生物資源科学部 研究員 赤星 栄志